石を投げる。
放物線を描いたそれは、ポチャンと音を立てて、池の底へ沈んでいった。
ボールを蹴る。
壁に当たったそれは、見当違いの方向へと弾んでいった。
頬を打たれる。
一瞬、頬が燃えるように熱くなって、ややあってからヒリヒリした痛みへ変わる。
ヒステリックに叫ぶ母親が何を言っているのか、いつも理解できないでいた。
こちらから何を言っても届かないから、すぐに何も言わなくなった。
人を殴る。
相手が何を考えているかなど知ったことではない。
ただ、俺がムカついたから殴った。
殴り返される。
俺が何を思ったかなど知ったことではないのだろう。
向けられる敵意は慣れっこで、いっそ心地よくさえあった。